要らないものを捨てたって面白くもなんともない
本日も、小説を読みつつ片付けのヒントを探っています。
山本昌代のエッセイ集「エルンストの月」は、1995年にNOVA出版から刊行されました。
様々な媒体に発表されたものを集めたばらばらな話題のエッセイ集ですが、この中のごく短い一遍「シンプル」は秀逸です。
- 30ワットの蛍光灯
- 空き家同然の家
- 冬でも布団がない
- 頭は丸刈り
といった暮らしぶりがさらっと語られます。
「大切なものを捨てるとすっきりする」
「要らないものを捨てたって面白くもなんともない」
「大切なものがそこにないという感じがいい」
まるで、彼女がかつて書いた、葛飾応為のような構わなさ。どこからがフィクションかも定かではありません。
初出は雑誌「クレア」(文藝春秋)の1991年10月号です。バブル経済崩壊直後です。
女性で丸刈りというと、1980年代の山田邦子を彷彿とさせます。
大切なものがありすぎる
現代ではスマホが日に日に、「無くしたら困る大事なもの」になっていて、ちょっと怖いくらいです。
その一方で、今日も私は、どうでもよいガラクタをいつ捨てるかで悩むおめでたさは相変わらずです。
「そんなガラクタより、一つしかないスマホを捨ててみろ」と山本昌代に言われてしまったら、ぐうの音も出ません。
元から要らないものなどさっさと捨てて、しかもスマホを紛失しても痛くもかゆくもない、そんな人は本当にかっこいいです。
山本昌代について
山本昌代は1960年生まれ。
津田塾大学英文科卒業なのに、在学中に江戸もの小説(「応為坦坦録」)をさらっと(?)書いて1983年にデビューしてしまう。
1991年刊行の「居酒屋ゆうれい」は萩原健一、山口智子といったキャストで1994年に映画化もされました。
その後イギリスに滞在し、現代のイギリスでの見聞をもとにしたエッセイなどが出ていますが、2001年以降の単行本の刊行は見られません。
イギリス滞在時のエッセイには、出版社とのやり取りに疲弊している様子がうかがえます。
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