「応為坦坦録」(山本昌代著)に見る応為の暮らし【ミニマルライフのヒント小説】

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アラフォーの出戻り女流画家・応為

「応為坦坦録」は山本昌代のデビュー作。1983年文藝賞を受賞し翌年に単行本が刊行されました。

応為は、「応為坦坦録」の中に出てくるアラフォー女性の雅号です。

彼女は父親と昔の東京都心で二人暮らしをしています。

父親は「葛飾北斎」を名乗る有名な画家で、応為もその血をひいており絵が上手です。

主に父親の代筆をしていましたが、この頃では応為を指名して描いてほしいという注文も入り始めました。

応為は身近な人に対しては口の利き方がぞんざいで怖いものなしです。

読んでいると何だか女子プロレスラーのような背格好をイメージしてしまいます。

生涯に90回くらい引越しをした葛飾北斎

二人は良く引越しをします。夜逃げと言っても良いくらいで、つけがあっても踏み倒していなくなってしまいます。

ふたりはわずかな衣類と絵筆、絵の具などのほかは家財道具をあまりもっていないので、思い立ったらいつでも引越せます。

鍋や食器もなくて、毎食とも店屋物です。

しかも食べに行かずに届けさせます。

新しいところに移ると、まずは毎食作って届けてくれるところを探します。

来客があるとお茶くらい出しますが、お茶を淹れて運んでくるのは隣の家の子どもです。

これも引越し早々、あらかじめ頼んでおきます。

良い絵を描くことが第一、身なりは構わず

応為には、将来の目標、目指すものがこれと言ってありません。

父親のような絵描きになりたいという欲もありません。

でも、絵に関しては自分の納得のいくものを描きたいと思っていて、適当にごまかすのは気持ちが悪いのです。

見ないと描けないようなものは、何とかして見せてもらおうとします。

照れや気後れがなく、愚直に体当たりです。

餅菓子とお茶がおいしそう

父親は甘党で、弟子や応為が買ってきた餅菓子などをたらふく食べます。

桜餅、大福、草餅、、、。

お茶は、大声で叫べば、2人分でも3人分でも運ばれてきます。

細かいことにはこだわらず、本質だけをつかみ取って生きているふたりです。

応為は実在していた

応為は山本昌代の想像上の人物かと思っていましたが、実在していました。

しかも、その作品も残っていたのです。

葛飾北斎の晩年は特に、かなりの部分を応為が手掛けていたようですが、なにぶん北斎のネームバリューがすごいので、応為としての作品は残っていないのではないかと私には思われました。

ところがあるとき、東京・原宿にある太田記念美術館の収蔵作品紹介の中に、作者名「応為」とあるのを発見しました!

しかも、普通の浮世絵とちょっと違う雰囲気。色が美しく、丁寧さが感じられるきれいな絵です。

「応為って実在の人物だったのか~」とそれだけで感動しました!(絵はまだ一度も見たことはありませんが。)

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