メアリー・ポピンズの作者の家には余計なものがないらしい

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説明をしてくれないお話

メアリー・ポピンズのお話は、私はかなり大きくなってから読んだ。

いったい、どこが面白いのかまったく理解できなかった。

メアリー・ポピンズという人物も、物語としても、起承転結、筋の通った説明をしてくれないお話なのである。

なんとトラヴァース本人も、あの本には問いしかないと言っている。

どうりで、読んでいてストレスが溜まるはずだ。

ロンドンのチェルシー地区にある自宅

最近、絵本・児童書の研究をしているジョナサン・コットの評論書を読んで、メアリー・ポピンズよりトラヴァース本人に興味を持った。

でもあろうことかトラヴァースは、著者がどんなものを食べてるかを知りたがるような読者を軽蔑するようである。

メアリー・ポピンズの著者、P.L.トラヴァースについてのインタビューは1979年7月に、トラヴァース宅にて行われた。

ロンドンのチェルシー地区にある、静かで、小さな、年経た家に住んでいるという。

おそらくこの時に撮られたであろうスナップの背景には、日本の絵の掛け軸も掛かっている。

トラヴァースは禅についての知見もあったようだ。

打てば響くかのようなとても充実したインタビューが素晴らしい。

訪問の終盤にジョナサン・コットが「このお住まいもよけいなものがなくてすっきりしていますね。」と問いかけると、トラヴァースはさらっと応える。

「優雅ではあっても、贅沢ではないでしょう。必要なものしか置いてないの。わたしはどこにいても、そこをさっさと自分の部屋にしてしまうの。ホテルの部屋も、小鳥の巣に早変わりだって言われるわ。でも、立ち退くようにと運命に命じられれば、何もかもそのままにして立ち去りますよ。」

「子どもの本の8人」ジョナサン・コット著

ひと口に「余計なものがなくてすっきりしている」といってもレベルは様々。

実際の写真でもあれば、きっとあれこれと物があって雑然としているのではないかと思う。

でも、客から見てすっきりした印象を与えたということと、トラヴァース本人も意識的に物を持たないようにしていることが重要だ。

むしろ余計な映像がないことでどのレベルのすっきり感なのか、想像して楽しめる。

立ち退く時にはそのままに

物を少なく持って暮らすことは、私も日々実践・研究しているのは良いとして、そこを立ち退かなければならない時が問題だ。

立ち退くとは、引越しのほかあの世へ旅立つことでもありうる。

私はいまだに、引越しの時であればがんばるつもりでいるけれど、あの世へ旅立つ時であれば、待ったなし。残していくしかない身の周りのさまざまなガラクタを思うと、まだまだ、心穏やかではいられない。

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