誰もが自由にたらたら生きていたい…【森博嗣を掘る】

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フルポン村上似?の森博嗣

「お金の減らし方」という新書の見返しには貴重な著者の写真が載っているのですが、口元を隠した芸術家風の写真で、それがどうも某お笑い芸人に見えてしまって困っています。

さて、自由人森博嗣氏は結構はっきりとした独自の意見をお持ちです。

小説家ではありますが新書・自己啓発書も何冊も出していて、切り口はその都度いろいろですが、内容はどれも「森博嗣が自由に生きているように見えるから、その秘密を知りたい」というニーズにこたえたもののように見えます。

内容が重なる部分もあるので、お忙しい方は森博嗣本を全部読む必要はなく、気になったものを読めば良いと思います。

ただ私は森博嗣節を聞きたくて、類書を何冊も読んでしまっています。

森博嗣に言わせればそうした読み方は具体例にこだわった依存であり、自由な発想から遠のいていると怒られそうではありますが。

大学院には行けるなら行ったほうが良い

「『やりがいのある仕事』という幻想」(2013年刊)は、これから就職をしようという人や、働き始めて間もない人を応援する本ですが、の第2章に「大学院出は得か」という話題があります。

これについて森博嗣は「その人次第」とか「時と場合による」とか濁すことなく、経済的に無理がないなら行ったほうが良いとはっきり言っています。(というのはもちろん、無理してでも絶対行ったほうが良いと言っているわけではありません。)

大学院進学については、就職難だから大学院進学や留学をして時間稼ぎをし、就職をできるだけ延期したいという後ろ向きな理由もあるかもしれませんが、一般に理系の院卒の就職は文系より良いと言われています。

森博嗣は大学で理系の教官の仕事をしていました。

また研究職は大学院卒が条件になっていることも多いということもあると思います。

これは、自分だけではなく、組織の中でも、また他者からの印象でも、少しずつ利いてくる。「そういえばあの人は大学院出だったね」と思い出すように、いつまでも残る。けして損にはならない。不利になることもない。
(「『やりがいのある仕事』という幻想」森博嗣著 2013年刊)

ヘタな資格を取るよりは、大学でも大学院でも、勉強に打ち込む時間をできるだけ長く自分に与えるのが一番価値のある投資であるというのが森博嗣の意見です。

働き始めるのが遅れたことにより出費した金額はあとで取り返せるし、そもそもそんなに早く働こうとしなくてよいというのです。

勉強する環境にいることで得られるのは少しずつしみ出してくるような風格、まさにお金で買えない価値を身に着けられることであるようです。

といっても、大学院進学は修士課程で2年、その後の博士課程でさらに3年という長丁場、学費は学校によって様々だとは思いますがざっと年に100万~200万くらい。

お金で買えない価値を得るにはお金がかかりますね!

答えることより問うことを評価する

さて森博嗣は大学の教官として過ごしたころ、学生の評価の仕方が独特でした。

「答えることより問うことにその人の力量が現れる」という信念のもとに、試験を一切せず、毎回の授業で質問を提出させてそれによって評価をするというのです。

どうしても試験を受けたい場合は申し出れば試験を受けることができますが、そんな学生は10年で3人くらいだったそうです。

質問は短く、回答も短くを旨としますが、毎回ワープロで清書して回答も添え、次の授業で説明がなされます。

一クラス50人×半年12回×年2講座で1200件、それが20年で2万4000件、近隣の大学で非常勤講師もしていたので合計3万件ものQ&Aが溜まりました。

そのほとんどが授業内容に沿った専門的な質問ですが、ほんの5%ほど専門外の科学一般や大学についての質問、さらには人生相談のようなものも寄せられています。

そのような専門外の質問の中から、一般の人が読んでも面白いであろう質疑応答を集めたのが、「臨機応答・変問自在」です。続編の「臨機応答・変問自在2」というのまであります。

誰もが自由にたらたら生きていたい

それでは「臨機応答・変問自在」から、私が気になった一節を抜粋します。

Q「私は一刻も早く主婦になりたいと願っていますが、それは、タラタラ自由に過ごしたいと思ってのことなのですが、それでも偉いんですか?でもお母さんって大変ですよね。」
A「偉いです。お母さんは大変です。仕事をするのは、お金をもらって、自由にたらたら過ごしたいからでは?どこも違いはない。
(注:「社会に出ても、家庭の主婦でも、人間の偉さは同じ」という話を授業中にしたために出た質問)

「臨機応答・変問自在」森博嗣著 2001年刊 Ⅲ人生相談?より

本は2001年に出ているから、質問はそれ以前に提出されたものですが、主婦になったらタラタラ過ごせると思うのはいまの学生でもあまり変わらないような気がします。

これに対し森博嗣は100%肯定します。

女性も男性と同じように働ける機会があるから働けだとかの建前をいいません。

みんな最終的にはたらたらしたくて、いま我慢したり、早めにたらたらしたりしてるだけのことなんですよね。

なお森博嗣は他の著書の中で妻のことを「奥様」と表記し、最大限の敬意を払っています。

結婚した当初から収入の8割で生活し、2割は自分の好きなものにお金を使う、ただし結婚しているなら妻ときっちり折半して、その範囲内ではお互い口出しをせず贅沢に使うという取り決めをしていたそうです。

でも仕事を持つのも気持ちがしゃきっとして良いものだから、仕事を持って十分な収入を得つつ、でも時々好きなだけたらたらできるような生活を、特別な能力・経験がなくてもだれでも選べるようであれば良いなあと私は思いますね。

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